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007.造形会社アレグロ

空想を実体化する秘密基地

池袋三丁目の山手通り沿い、少し路地を入ったところに奇抜な建物がある。

コンクリート打ち放しの壁面からシマウマとキリンが首を出し、屋上からはメカニックな象がこちらを見下ろす。狭い路地に面した大きめの引戸から中を覗いてみると、等身大フィギュアのパーツに着彩を施す人々の姿が。


造形会社アレグロは、アニメ、マンガ、映画、ゲームなど架空のキャラクターや世界観を立体造形物として実体化する、ものづくりの工房だ。

ジブリや手塚プロダクションとの協働をはじめとし、今もまさに成長を続けている日本のコンテンツ産業の一端を担い、会社自身も成長を続けている。

いろいろな工作機械が揃い、いろいろな見たことある有名キャラクターのパーツが転がっている様子は、さながら秘密基地のようでもある。


副社長の成本さんと喜劇人形たち(後)

社長の中村園さん、副社長の成本亮さんに話を伺った。


人形作家の中村園さんが、高田馬場のマンションの一室で始めた造形の仕事。

「作家性と下請けの狭間で、やっぱり自分は立体造形で生きていきたかった。だから黒子職人としての生き方を選んだ。」

と中村さん。








黒子としての生き方がいつしかアートのような感覚へ

一時一時を必死で駆け抜けてきたので、当時の仕事の前後関係が曖昧だとのこと。

ジブリ依頼による「ハウルの動く城」の実体模型では、 高さ7mにおよぶ造形物を組む鉄骨を実際に鉄工所と構造計算をしながら、本社横にあった空き地に仮説足場を設けて組み上げたという。

会社には造形の他にメカの専門部隊があり、「ハウルの動く城」は実際に動くように作られた。


しかも、その造形制作は映画完成後ではなく、映画と同時並行で進められたというから興味深い。

ジブリからの初期のセル画を元に、2次元の絵を3次元の立体へ。

2次元で見えない部分は想像しながら立体化し、ジブリ側と確認をし、調整・修正しながらの製作。

映画側も並行してブラッシュアップされていくため、劇中で変わっている部分に気づいたりすることもあるそうだ。


「黒子職人」でありながらも、空想を実体物として実現させるために想像と技術を絞り続ける仕事。

中村さんは「それが今やアートのようになっている感覚」だという。



実用物以外なんでも作れる工場

熊野町交差点の近くの第二工房。

かつては鉄工資材倉庫だった気積の大きな空間では、複数の大型のキャラクターやメカの造形が行われていた。

大型の発泡スチロールを加工できるNC加工機や大判の木工加工機など、あらゆる設備が揃う。柔らかな発泡スチロールで原型を作りFRPで最終造形、もしくはディスプレイ期間の短いものはそのまま発泡スチロールに着彩することもあるそうだ。


「なんでも作れますね」と聞くと、「実用物以外は(笑)」との答えが。


南町に最近新設された第四工房。

ここはかつてはリサイクルショップだった。

縫製作業が中心の工房で、2階にはミシンや生地の棚が並ぶ。フィギュアの服や着ぐるみ、ぬいぐるみテイストのキャラクター達はここで仕上げられる。


造形部門、メカ部門、縫製部門、各専門が揃い、空想を実体物にするために、今日も想像と技術を働かせ続けている。


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