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005. 佐藤プラスチック

更新日:2019年5月6日

境橋の青い三角屋根

煉瓦色の舗装にひときわ目を引く青い三角屋根トタン壁の可愛らしい建物がある。

看板やサイン板などの加工やアクリルの箱の製造を今も手作業で行う、プラスチック加工の工場だ。



工場長の杉本さんは20代の時にこの工場に弟子入りした。先代が亡くなり、そのままここを継いで30年。

今は材料取りから切断・穴あけなどの作業を一人でこなす。


すぐ隣は奥さんが経営する美容院

「ヘアースタジオ」。

この距離感がなかなか良い。

奥さんの杉本カネ子さんは、すぐ近くの「みらい館大明」の理事長も務めている。





3つの作業台

工場内には3つの作業台とスペースがあり、それぞれが異なる役割を持つ。


まず一番手前の天井の高い場所にある作業台。

壁際には色々な厚みのアクリル板や塩ビ板などの材料が立て掛けられ、

中央には大きなテーブルソーが置かれている。


ここは材料の切断や切削のためのスペース。

コンクリート土間の床には材料の削りかすが飛び散っている。



次に一つ奥の、一段床を上がったところにある作業台。

材とりや穴あけ、接着のためのスペース。



よく見ると天板は

透明なガラスでできている。

「なぜガラスなんですか?」

との問いに

「接着剤を注入する時に、下から光を当てて注入具合を確かめるんですよ」

と気さくに教えてくれました。


なるほど、透明なプラスチックを扱う工場ならではですね。






一番奥の作業机。

カッターマットが敷かれ、頭上の棚には多色多種のカラーシート。


ここは作図とサイン表示カット・貼付等、準備と仕上げの細かい作業を行うための作業台。


残材や埃が出る作業は材料倉庫を兼ねた土間部分で、

精密な作業は奥の机で、というふうに

能率的な作業ができるように分けられています。


これも長年の工夫と知恵。



フラっと入ってきて、話して、工夫が生まれる

取材の最中、

「今日はどうだい?」

とご近所の佐藤さんがフラっと入ってくる。


佐藤さんも代々の工務店を継いだ職人さんだ。


「M8の穴あけ持ってない?」

「M8は持ってないな。」


こうした道具の貸借りも、このあたりの町工場では日常茶飯事。


話しながらも黙々と穴あけ作業をする杉本さん。

それをすぐ横で見つめる佐藤さん。


「鉛筆の印と穴がずれてるよ?良いの?」 

「いや、そこは長年の経験だから。」


冗談とも真剣とも分からない会話も、こうした親しい間柄ならではなのだろう。


「どうしてもバリ(※)がでるな。」


「裏に何か当てたら?」


 ※バリ:硬い材にドリルなどで穴を開ける時、裏側が貫通時にささくれ状に盛り上ること




佐藤さんからのアドバイスを受けて、

裏に当てるものを試す杉本さん。


最初は同じ厚い塩ビ板の端材を試してみたもののあまり改善せず、

他を試すことに。

木の板を使ったところは、

裏側もとても綺麗に穴が開いた。


「あぁ、これなら良い感じだよ。」 「上手いもんだな。」




一見地味な作業だけど、こうした些細な会話の中から工夫が生み出されていた。


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