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Lecture Series07. for Cities・石川由佳子 氏+杉田真理子 氏

2021年11月30日(火) 19:30-21:30 @11-1studio

レクチャーシリーズ07 「触れられる都市の実践」

2021年11月30日(火) 19:30-21:30

Speaker: 石川由佳子+杉田真理子/一般社団法人for Cities代表

レクチャーシリーズ第七回は、東京・京都・アムステルダムに活動拠点を持つ都市体験のデザインユニットfor Citiesの石川由佳子氏と杉田真理子氏。

今秋、池袋・ニシイケバレイと京都・Birdge toにて初開催となったアーバニスト(=都市実践者)のための祭典「for Cities Week」は、建築・アート・デザイン・地域づくり等分野を問わず多くの人を引きつけました。

そんな彼女らの活動が始まったのは半年前、アムステルダム。

異国の地、しかもコロナ禍で足止めやロックダウンを食らう中、アムステルダムのボートハウスに暮らしながら、インターナショナルかつローカルなfor Citiesの枠組みづくりに奔走。

同時にアムステルダムのアーバニストと協働した現地プロジェクトを実現しました。

for Citiesが目指すのは、「誰か」まかせでない自分たちのための都市づくりを実践するアーバニストのための、開かれたプラットフォームをつくること。

実際、for Citiesが運営するキャンペーンサイトには世界中から「身近な都市生活」を豊かにするためのアイデアが日々投稿されています。

与えられた空間を便利に生きるだけでなく、自分のまわりの環境を創意工夫しながら充実感のある風景に変えていく。

同時代に生きる建築・都市に関わる方にも、もちろんそうでない方にも是非聞いてもらいたいテーマです。



【都市体験のデザインスタジオ】


<怒涛の一年、無形の強さ>

for Citiesの活動が始まったのは2020年4月とのこと。

その頃はちょうどコロナ禍、日本の都市部に初の緊急事態宣言が発令されたのが2020年4月7日だったから、まさにその真っ只中だ。

そんな中にあって彼女らがまず始めたのがGood News For Citiesというポッドキャスト配信。

世界中から、今彼女らが面白いと思う、都市にとってのグッドなニュースの収集であるが、それを収集で済まさずにポッドキャストにして配信していくという行動力がまたすごい。


その後同年8月にはアムステルダムへ。

コロナで行動が制限される中、本来の行き先だったアーバニストインレジデンスのあるベルリンに入国できなくなり、結果行き着いたのがオランダだった。

アムステルダムに滞在しながら、もともと繋がりのあった現地のアーバニスト・新たに開拓した繋がりと協働する形で、現地にプロジェクトを「置き土産」。

また滞在中に、その後の「for Cities」のあり方を連日話し合った。


「都市を愛し、都市を舞台にする仲間達にもっと出会いたい。」

そんな思いで立ち上げた「for Cities」のアイデアプラットフォームもこの時期である。


まさに怒涛の一年。

この活動だけでも1日話しても話し足りないほどの内容で、しかもその「形」を説明するのが非常に難しいものの、何か一貫した強い流れ・芯のようなものはあって強い共感を覚える活動の数々。

ほどよく醸成されていく「無形の強さ」は、おそらく彼女ら独自のものだと思った。




<for Cities Weekとは何だったのか>

そして話は今年2021年秋、東京と京都で開催された「for Cities Week」へ。

低層建物が群立する私有地の路地に人の面白い動きを促す「しかけ」を施したり、ビニールで風船のようなものを作って家の入り口に浮かべ、ある日にはその風船を持って街に繰り出したり、都市の「ugly=醜い」建物を見つけてポジティブにディスる散策ワークショップをやったり。

展示会とも違うしアートイベントとも違う。これまでの概念では説明できないもの。

今の彼女らの言葉であえてまとめるなら

「自分の暮らしのあり方をズラしたり、解放したり、再構築する、都市生活の学び合いの場」

とのこと。


確かにそこを訪れた人々は一様に、それぞれが何かを感じ、都市について考え、謎のポジティブな気持ちになって帰っていく。

そのポジティブさとは、おそらく

「こんなにいろんな人が都市のことについて他人事でなく自分なりに考えていたんだ」

という気づきそのものだったような気がしている。




<都市とは、コミュニティとは>

後半、建築家としての自分の都市観を少し投げかけてみたりした。


特に、彼女らの無形とも言える断片的活動が、どのように現前する都市や地域に(もっと踏み込んだ言い方をするなら地域の商工業やコミュニティに)ランディングしていくのかが気になった。

トップダウン型の都市計画とも合意形成型のまちづくりとも違う、もっと断片的で離散的だけどそれでいて都市をポジティブに作り変えていく第三の手法のような可能性を感じたからである。


今の自分なりに解釈するならそれは、都市の「エコシステムの再編」。

都市に残存する「エコシステム」やその痕跡を愛でつつ、それを現代なりに自由に再解釈して(棄却したり新たにゼロから作り上げたりするのでなく)連歌的に再編していくような。

実はそうした動きは各所で(意識的無意識的問わず)起こりつつあるのだけど、それが何なのか的確には言い表されてないし、今回もうまく言い表すことができなかったのだが。


その後は会場からもいろいろな発言が。

for cities weekの準備段階、「ある道具が必要なのだが地域で手に入らないか」というヘルプに総力を上げて応えようとする地域の人々というような、近所での醤油の貸し借り的な現代のコミュニティ、地縁の話。

一方で現存する商店街の中で、商店主自身がその地域商工業を現代へランディングさせていこうと泥臭く奮闘しながらも商店会や町内会の古い序列やしきたりにハマって一筋縄では行かない話など。

いろいろな立場の人がそれぞれの立場で都市について考えていて、それを交換できたのはすごく良かった。


<「動く人」が集まること>

レクチャーシリーズも7回目。

毎回、会として何かの結論が出るわけではないけれど、それぞれの参加者がそれぞれ何かを感じ何かを持ち帰ったようだった。

よくよく考えると、11-1studioの特にレクチャーシリーズに集まってくるのは大小問わず何かを創り出そうとしている人であり、何かを実践してるもしくは実践しようとしてる人、そしてその過程で何かモヤモヤを抱えた人が多いのかもしれない。

自分で動いて何かを始めようと思うから、何かのモヤモヤを抱える。

自分が動いているから、同じように動いてる人を見ると敏感に感じる。

(自分自身もそうだけど。)

なんかそういう人たちの拠り所のような場を作り続けられたら、と思った。



文責:砂越 陽介(11-1 studio)

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