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Lecture Series08. @カマタ/CHAr・連 勇太朗 氏

更新日:2022年5月27日

2022年4月21日(木) 19:00-21:00 @11-1studio

レクチャーシリーズ08 「ネオ_カマタ_エコシステム」

2022年4月21日(木) 19:00-21:00

Speaker: 連勇太朗/建築家・@カマタ・CHAr

参加費:1,700円(ドリンク付)    

※町co場会員は1,200円

定員:15名程度

参加方法:FBイベントの「参加」ボタンもしくは11-1studioインスタDM

町工場や商店街に隣接したこの場所で「ものづくりとまちづくり」を切り口に、地域商工業のこれからを考える、月に一度程度のレクチャー+交流会。

第八回は、大田区蒲田を拠点に街にコミットしている@カマタ代表で建築家の連勇太朗氏。

京急梅屋敷駅の高架下に突如現れる複合施設KOCAにはクリエイターやアーティストが入居し、周囲大田区の町工場とつながりながら日々新しいコラボレーションやプロダクトを生み出しています。

そんな連さんの蒲田との関わりは、学生時代にプロジェクトとして立ち上げた「モクチンレシピ」から始まります。

東京23区内だけでも20万戸以上現存するといわれる戦後日本の遺産、木賃アパート。多くが古びて空室率が増え負動産と化し、都市災害等のリスクの温床にもなっている問題に対し、手軽でローコストかつ魅力的な改修手法を「レシピ」としてweb上に無料公開。

一つの作品に集中するのではなく、多様な主体と協働し敷地境界を飛び越え自律的な街を育てていく建築家像を示しました。

2018年、「モクチンレシピ」から繋がった地元の不動産会社らと立ち上げたのが「@カマタ」。京急と共同で進めている「梅森プラットフォーム」は、町工場の街大田区のものづくりを入居するクリエイターと協働する形でアップデートしていくプラットフォームとして育てるべく、さまざまなプロジェクトを動かしています。

木賃や町工場から新興マンションまである雑多な印象のカマタがどのようにアップデートされていくのか。どのようなエコシステムが育まれていくのか。創造的実験の現在地を学びたいと思います。




【町工場と住宅地が建ち並ぶ雑多な街並みこそが新しい時代のフロンティアだ】


お世辞にも綺麗とは言えない(すみません)木賃密集住宅や商店街、町工場が雑多に混ざり合う街、蒲田。

@カマタはそんな蒲田に住む(厳密には旧蒲田区に住居がある)建築家・不動産屋・クリエイターらが出資者かつプレイヤーとなり、街を面白くすべく動く株式会社である。

その共同代表で建築家の連勇太朗氏。

そもそもの蒲田との関わりは、学生時代に始めた木賃住宅に対する改修システム「モクチンレシピ」から。

もともとC・アレグザンダーの言説に親しんだ連さんは、「建築家がいなくても街が良い方向に自律的に変わっていく仕組み」に興味があり、その色が色濃く反映されている。

現在は「モクチン企画」改め「CHAr (=Commons for Habitat and Architecture)」としてその代表も務めている。


@カマタのスローガン「TOKYO PARALLEL FRONTIER」

町工場や住宅地が立ち並ぶ雑多な街並みこそが新しい時代のフロンティアになる、との意気込みがこもっている。

確かに以前実際に訪問し街歩きをしたが、雑多な街並みの中に溶け込みつつ不意に現れる新しい拠点たちが輝きを放ち、これから生まれてくるであろうさまざまな試みや取り組みが蠢いているような、そんな一帯になりつつある。


【双方向なやりとりを産む「遊び」の空気感】

その拠点、京急梅屋敷駅の高架下に作られたインキュベーション施設KOCA。

KOCAは町工場とクリエイターのコラボレーションを標榜するが、その取り組みにはさまざまな工夫が見て取れる。

その最たるものが「ROUND TABLE」という、町工場とクリエイターが一つのテーマで3ヶ月対話を重ね形にしていくコラボレーションプログラムだ。


「デザイナー×町工場」、「アーティスト×町工場」。

こうした取組み自体は近年各所でよく見られるようになった。しかしあまりうまくいっているとは言い難いのが実情だ。

一番多い「失敗例」は、お祭り的に一度アウトプットして終わってしまい、持続していかないというものである。


連さん曰く、多くのコラボレーションは「売れるプロダクト」を作ることを最終地点としてしまいがちで、結果「クリエイター→町工場」という一方向のコミュニケーションに留まり、プロセスも「業務的」となり、一緒に新しいものを作り続けていくという空気感が醸成されていかないとのこと。

KOCAの取り組みやプログラムはこうした落とし穴をうまく回避しながら、「クリエイター↔︎町工場」で双方向な対話が行われるよう図っている。

それは「遊び」の空気感

「商品を開発する」と肩肘を張るのでなく、一見バカバカしいことも含めてクリエイターも職人も気軽にアイデアを出し合い、気軽に作り、修正し、形にしていく。

例えば前回2020年は「遊具-遊び心をくすぐる」と文字通り「遊び」がテーマで、そのアウトプットも「溶接で三角形に組まれた回るガードレール看板」であったり「材料試験の原理を取り入れた実験装置」であったり、もはや「商品」ではない。

しかしプロダクトが残る代わりに、町工場とクリエイターがコラボして作ってみて、またさらに作っていく、そんな気運と空気感が街に醸成され、続いていくのである。


クリエイターと町工場を掛け合わせることで我々が見たいのは、それによって拡がった町工場や街の新たな形であり、それこそが重要なのだ。

そんなことに気付かされた。



【人々自らが作れる環境をつくること】

連さんはKOCAの運営者であるとともに建築家である。

私自身も11-1studioを運営しながら建築家。

さまざまなコトを動かしながら、建築家としてどのような作家性や建築のあり方を標榜しているか、やはり気になったので質問をぶつけてみた。



メタデザイン、つまり人々が自分達の手で作れる環境をつくることに興味がある。」

と連さん。

CHArの事務所は密集した住宅地の中にある、広めの前庭を持った改修された民家だ。

塀もフェンスも取り払われて誰でも入ってこれる公園のような前庭には遊具や卓球台が置かれ、近所の子供たちが自由に遊んでいる。

連さんは日々そこで前庭の遊具の位置をずらしたり追加したりすることで、どのような行動の変化が起こるか、密かに観察して楽しんでるそうだ。その子供たちは最近では事務所の中にまで入ってきて我が物顔で過ごしているという。


見えないネットワークを可視化する、そうすることで街の新たな可能性や形を見せていく、連さんにとって建築はそんな可視化装置なのかもしれない。



文責:砂越 陽介(11-1 studio)

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