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Lecture Series11. 無印良品・成松 宏晃 氏


レクチャーシリーズ11「土着化するMUJI

Speaker: 成松 宏晃/ 無印良品 板橋南町22 店長

日時:2022年12月2日(金) 19:00-21:00

参加費:500円(ドリンク付)

定員:15名程度

町工場や商店街に隣接したこの場所で「ものづくりとまちづくり」を切り口に、地域商工業のこれからを考える、月に一度程度のレクチャー+交流会。


第十一回は、この十一月ここ南町にオープンした無印良品板橋南町22の店長、成松 宏晃氏。

路面店として関東最大級の新店舗が掲げるのは「つかえるMUJI、はみ出すMUJI」。

地域の人々が日常的に普段使いできる場所として、また地域の要素が入り込んだり、MUJIの要素が街へはみ出して地域と混ざり合ったりする、地域のコミュニティーセンターのような場所を目指しています。


例えば板橋南町22と番地を冠した店名であったり、1Fエントランス近隣の情報がマッピングされたMUJI to GOであったり。特に目を引くのが2F「食とテラス」のフロア。市場のように多くの台車が並び、板橋区内や要町のいろいろな生産者による食品や生花が彩ります。さらに、資源回収ステーションや古着回収とReMUJIの仕組みなど、地域での資源の循環もしっかりケア。


かつては食品開発担当の際には、「地域色」というよりはむしろ真逆の、全チャンネル統一でのモノづくりに勤しんでいた成松さん。

「土着化」を標榜する無印良品にあって、この生活圏エリアでの大型店というチャレンジングな取組みがどのように進み地域に「土着化」していくのか、「土着化」した先の地域はどのようになっていくのか、そんな話を集まってできたらと思います。


こんな人におすすめ

・近隣に住んでいる/近隣でなりわいを営んでいる

・まちづくりに興味がある

・無印良品についてもっと知りたい

【創業期の無印良品】

今や日本を代表する一大ブランドとなったMUJI。

そもそもの始まりは1980年、SEIYUのプライベートブランドとして。

最初は食品・日用品40品目からなる、今から考えると小規模なものだった。

その特徴は「わけあって安い」のキャッチに凝縮される。

例えば’割れ椎茸’という商品や’しゃけは全身しゃけなんだ’の新聞広告。

ここで言う「わけ」とは粗悪品ということでなく、素材の選択・工程の点検・包装の簡略化という普遍的な質を守りながら、質と関係ない理由で廃棄されてしまったり商品にならなかったりするものの価値を見直すという視点であり、理性的な満足感のこと。

最近でこそSDGsがそこらかしこで謳われるようになったが、バブルに沸き立ち始める当時の日本にあって、この無印良品というブランドがいかに革新的でカウンターカルチャーでロックだったかということだと思う。



【「ふだんの専門店」としての無印良品 板橋南町22】

話はそこから、今回オープンの無印良品板橋南町22の話へ。

無印良品本部や百貨店がある池袋からもほど近い住宅地に郊外店のような規模でオープンすることになった板橋南町22が、オープン時に掲げた戦略は「ふだんの専門店」。

日用品をさっと買いに週に数回通う居場所的な「お店」。


そうした特徴は、2F食品売り場のハーブティー量り売りや、3Fのシャンプーやスキンケア商品の量り売り、リサイクル用衣服回収の「Re-MUJI」などのコーナーに現れている。

実は都内だとショッピングモールなどの中に入っている無印が多いのだが、単独の路面店、しかも住宅地の中にあるものというのはあまりない。

だから、いかに日常的に、かつ単に買い物だけではなく人と人、人と地域がつながれる場といったような戦略が必要になる。


「つかえるMUJI、はみ出すMUJI」

というキーワードもこのような戦略から、板橋南町22店ならではのものとして生まれた。



【地域MDを進めたい訳】

2F「食とテラス」のフロアでは、屋台状の台車が数台並び、マルシェのように野菜や花が並ぶコーナーがある。

ここで取り扱うのはMUJIのセルフブランドではなく板橋区内の農家やお店による生花・野菜、そして「板橋のいっぴん」など、地域に彩られたコーナーである。


成松さん自身の思い入れとして作りたかったのも「地域のいっぴん」。

例として吉祥寺「さとう」のメンチカツのように、その一品で人が並び食べて笑顔になれるようなものを挙げる。

いくつかこの場所で実現したものもある。要町の弁当屋「アホウドリ」と協働した「バタ天」であったり、同じく近くのブルワリーと協働した「板橋IPA」であったり。

ただ一方で、世間一般としての「いっぴん」と企業としての「いっぴん」のレギュレーションの差が大きいという障壁もあり、苦労の日々を送られているようだ。



【初めて「印」をつけるMUJI?】

後半の全体ディスカッションでは、こうした板橋南町22店による地域との連携や「土着化」の今後の展開についてや、実際オープン時に向けて進めてきた連携の中でのスピード感や意識のズレなどについての質問があった。


印象に残ったのは「良い意味でも悪い意味でも、店に入ってあまり’無印感’を感じない」との意見。これは確かに、自分自身も行ってみて感じたことだった。

これについては「初めて’印’をつける無印にしようという話をしていた」と成松さん。

まだ道半ばの部分が多いのを自認しつつ、地域の人と一緒に商品を作り販売するような理想も頭の中で思い描いているようだ。


地域の`特産物`を取り扱うという意味では「道の駅」なところは実現されている。

しかし都内池袋近くの住宅地で周りにいろいろな情報・人のリソースが点在する中での人や地域をつなぐ拠点、ましてや1980年代に革新を起こした無印良品ならもう一歩先に行けるのではないか。

今後の展開にも期待したい。



(文責:砂越 陽介/11-1studio)

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